FAQ 賃貸管理トラブル集

  1. 水道の個別メーターがない場合における負担額の請求
  2. 借主に対する差押通知書等が貸主に届いた場合の対応
  3. 礼金を取る事は、消費者契約法で問題とならないか。
  4. 駐車場をコンテナボックスの置場として賃貸する場合
  5. 高低差のある隣地より雨水が入り込んだことによる損害
  6. シロアリ被害の責任
  7. 分譲マンションを賃貸に出す場合の留意点
  8. 自殺による損害賠償の請求
  9. 室内で病死後2ヶ月は金銭給付を請求できるのか
  10. 区分所有建物の賃貸における借主の共益費のトラブル
  11. 借主の自己破産開始手続きの通知が届いた場合
  12. 普通借家契約期間
  13. 次の募集に限りペット飼育可能にする場合の契約内容は
  14. ペット飼育不可物件から飼育可能物件への変更は法律上可能か。
  15. 無断転貸による解除は可能か。
  16. 金融機関の主張を阻止して任意売却は可能か。
  17. 貸主の承諾を得た同居人にある物件への権限は
  18. 周辺利用による貸主の責任
  19. 内容証明郵便による家賃督促の場合、管理業者名義で行うことは弁護士法違反なのか
  20. 弁護士法違反
  21. 共益費の内訳を開示する法律上の義務はあるのか
  22. 賃料と共益費とが別建てで記載しなければならないのか。賃料○○円(共益費込)とは出来ないか。
  23. 建物賃貸借契約に違約金条項を入れることは可能か
  24. 社宅使用目的の法人契約の場合、消費者保護法は適用されるのか。
  25. 見込み収入の上での入居申し込みの際の留意点
  26. 在学期間のみの留学生を受け入れる
  27. ルームシェア―による借主は
  28. 貸主の一部が行方不明の場合の賃貸借
  29. 使用貸借
  30. 転貸借と他人物賃貸の使用貸借
  31. 未登記の建物を賃貸借の目的とすることはできるのか
  32. 一定期間の賃借は一時使用賃貸借契約でよいのか
  33. 居住用の区画を事業用として使う場合の契約の種類
  34. 期間の定めのない契約からの変更契約・借主の増築部分の権利関係

水道の個別メーターがない場合における負担額の請求

1棟の古い建物の各部屋に異なる借主が入居しているが水道光熱費についての計測メーターが各部屋個別に設置されておらず1棟の建物全体についてのみ水道光熱費についての計測メーターが設置されている場合において、貸主が借主に対し水道光熱費を各借主の賃借面積に従って割合的に請求することに合理性はあるか。
水道光熱費は、使用料に応じて負担することが原則である。
しかし、本件の場合は建物が古いこともあって使用した割合に応じて請求することが困難であることから、貸主が借主に対し水道光熱費を各借主の賃借面積に従って割合的に請求することに合理性はあると思われる。

借主に対する差押通知書等が貸主に届いた場合の対応

建物賃貸借の貸主に対し税務署から借主の滞納税金を被保全債権とする敷金返還請求権の差押通知書、質問書及び回答書面のような書面が来たが、どのように対応したらよいか。
貸主は税務署に対し回答書面を必要要請を記載した上で返送すべきである。なお、借主に貸主に対する債務がある場合、貸主は敷金から当該借主の貸主に対する債務を、当該差押えに係る滞納税金に優先して控除することができる。

礼金を取る事は、消費者契約法で問題とならないか。

礼金については、消費者契約法上無効ではないという地裁レベルの判決がある。ただし、いずれにしてもどのような性質の金銭なのか、その性質に見合った合理的金額なのか、契約時に十分に情報提供されたのかが問題となるので、それらの点を精査したうえで取り扱いを検討する事が望ましい。

駐車場をコンテナボックスの置場として賃貸する場合

ガレージを2台分同一人物に賃貸することを検討しているところ、借主予定者は、1台分は駐車場として使用する予定であるが、もう1台分はコンテナボックスを置きたいとの話をしている。この場合においての注意点は
ガレージを含む駐車場は賃料が高くない一方で、賃料が未払いとなって車が放置された場合の貸主のデメリットが大きい。仮に、借主が賃料を未払いとしてコンテナボックスを放置した場合には、その撤去費用は実質的に貸主が負担する可能性が高い点に注意。

高低差のある隣地より雨水が入り込んだことによる損害

A所有の甲土地に甲建物が建っており、その隣地にB所有の乙土地に乙建物が建っている。なお、甲土地と乙土地は、甲土地の方が約30㎝高くなっている。今般、BからAに対し、「甲土地から乙土地に大量の雨水が流れてきており、乙土地の地盤が緩んでしまっている。場合によっては、今後、乙建物が倒壊する危険性すらある。甲土地から乙土地に雨が流れないような工事をしてほしい、なお、今後、乙建物が倒壊した場合、損害賠償責任を請求する。」との話があった。本件において、AがBに対し損害賠償責任を負う可能性はあるか。
将来、乙建物が倒壊し、その原因が「甲土地から乙土地に大量の雨水が流れたがために乙土地の地盤が緩んだこと」にあり、Bがその立証出来た場合は、本件に於いてAがBに対し損害賠償責任を負う可能性もある。ただし、実際上は、その立証は困難であると考えられる。

シロアリ被害の責任

シロアリにより建物の基礎部分の被害が発生した。借主が窓を開放し続けることから侵入し繁殖したとも考えられる。この場合、補修費用等は誰が負担すべきか。
シロアリ被害の原因が100%借主の不注意によるものと立証できる場合には借主の負担となるが、その立証は困難である。まどの開閉についても、住居として使用する以上、窓の開閉があることは通常の使用方法であり、直ちに過失と認められるわけではない。したがって、建物の主要構造部分であることも考えれば基本的には貸主が負担する事とし、借主側に何らかの落ち度があれば応分の負担を求めるという形で協議していくべきではないかと考える。

分譲マンションを賃貸に出す場合の留意点

分譲マンションの賃貸を考えている。ただし、①オーナーは住宅ローンの残債がある。②賃貸できる場合、給湯器その他の設備関係の老朽化に備え、一定額を預かることを考えている。
①については、住宅ローンの貸主である金融機関に確認をとることが必要である。一般的に居住用ではなくなった場合(金融機関に無断で利用等を変更した場合)、期限の利益を喪失し一括返済を求められることがあるので注意すべきである。②給湯器等の設備については、オーナー負担とされるべき部分であり。敷金を充当する事は問題である。管理の受託者としては、オーナーの承諾を得たうえで数ヶ月分の賃料を預かり、当該預かり金をもって修繕費に充当することは分別管理をしておくなどと前提とすれば、問題ないものと考えられる。

自殺による損害賠償の請求

6年以上居住していた借主がユニットバスの中で練炭自殺をした。貸主は、当該借主の相談人に対し、①風呂釜の交換費用、②お祓い費用、③フローリングの補修費用、④その他の損害賠償の請求をすることはできるか。
①については、請求できたとしても交換費用の1割程度と思われる。②については法律的には、ユニットバスにおける自殺とお祓い費用との間に因果関係が認められることは困難であろう。③については「ユニットバスの中での練炭自殺」とフローリングの補修に関連性が認められるか疑問であることから著しく困難であると思われる。④については、賃料を低減せざるを得ない事についての損害請求することが出来る場合がある。

室内で病死後2ヶ月は金銭給付を請求できるのか

借主が病死し、死後2ヶ月くらいで発見された。自殺ではないし、すでに20年住んでいて、原状回復費用としては既に消却済で価値はほとんどない。この場合、親族に対して、一定の金銭給付を請求できるのか。
心理的瑕疵の問題は、自殺だから認められて、病死であれば認められないという紋切り型ではなく、その事情が次の借主にとって心理的に嫌悪感を生じさせるものであるかどうかの具体的な事情の有無で判断される。病死であっても死後一定の期間後に発見された場合については、状況により原状回復等工事の遅れ、空室期間の長期化などの特段の事情がある場合には、当該空室期間の補填的な意味合いで、金銭給付を請求する事も可能であろう。

区分所有建物の賃貸における借主の共益費のトラブル

分譲貸しマンションで、借主が共用部分の管理は管理組合が行い、それに相当する部分は家賃の中に含まれているはずだから、共益費は支払う必要がないと主張している。どのように考えるべきか。
分譲マンションにおいて共用部分の清掃や維持管理は管理組合が行うが、当該費用は区分所有者が支払う管理費で賄われる。しかし、管理費は管理組合の運営等の様々な経費に使われていること、共用分の維持管理により実際に利益を受けるのは借主であり、実質的には通常の賃貸における共益費と評価する部分もあることから、それを家賃と別枠で設定する事は不合理ではないものと考える。要は家賃と共益費の構成要素を借主に説明し十分認識してもらう事が大切である。

借主の自己破産開始手続きの通知が届いた場合

事業用建物賃貸借契約を締結している借主(法人)の代理弁護士名義で借主が自己破産開始手続きの申し立てをすることになったとの通知が届いた。貸主はいかなる措置を講じるべきか。
早々に当該弁護士に連絡して、賃貸借契約の合意解約をし当該建物の原状回復をしてほしい旨の話をして、早期対処を求めるべきである。なお、破産手続開始決定前の未払い賃料については破産債権、破産手続き開始決定後明渡しまでの賃料及び賃料相当使用損害金については財団債権となる。

普通借家契約期間

借主は、契約期間を3年としたいとしているが、高齢のため、貸主は契約期間1年の普通借家契約でと考えている。合意がなされれば、契約期間1年という定めは可能なのか。
普通借家契約は、契約期間の最短は1年であるので、1年の契約期間を定めることは問題ない。ただし、借主側の要望と期間1年という更新前提の場合とで借主側の負担が異なる場合(例えば更新料の扱い)には、十分な説明と合意がないと、消費者契約法上の問題とされかねないので注意が必要である。

次の募集に限りペット飼育可能にする場合の契約内容は

今までペット不可の物件で、空室が長かったものにつき、今回ペット可能にしてもらえば借りたいという希望者が現れた。貸主も、今回の借主についてのみペット可能で貸してもよいとしているが、従前の契約とで異なる内容を決める必要はあるのか。
ペット可能になると、物件の傷み具合や近隣との関係で従前とは異なる状況になりうるので、原状回復や使用ルール、近隣迷惑行為の内容等について明確に定め、かつ、原状回復費用も多額になることが予想されるので敷金等を多めに設定することなどを検討する必要がある。

ペット飼育不可物件から飼育可能物件への変更は法律上可能か。

ペット飼育不可物件での契約をした場合、契約内容の変更の問題が生じる。ペット飼育不可物件であることの約定をした借主とペット飼育不可物件をペット飼育可能物件に変更することの同意を得る事ができるなら問題はない。なお、仮に、建物全体がペット飼育不可物件であることを条件にして借主を募集していた場合、当該物件のすべての借主の同意を要する。

無断転貸による解除は可能か。

賃貸物件でオーナーに相続が発生した。テナントが5件あるが、うち1件は転貸となっており、テナントは被相続人から口頭で承諾を得ているとしている。しかし、相続人は証拠がないため無断転貸であり、契約を解除したいとしている。どのように考えるべきか。
転貸の承諾の有無は、言った言わないの世界であり、最終的にはテナント側が「承諾があった」ことを証人等を通じて証明できるかが問題となる。ただし、例えば転貸の時期がかなり以前であり、被相続人もその事実を認識し得たこと、にもかかわらず何も是正等を求めていなかった事、賃料は転借人か直接支払っていたことなどの事情があれば、それは転貸を承諾していた(少なくとも黙示の承諾があった)と評価される材料となるので、それらの店の経緯をまずはしっかりと確認し、整理しておくことが大切である。

金融機関の主張を阻止して任意売却は可能か。

ローンが支払えなくなったため、金融機関から抵当権の実行の通知が来た。オーナーとしては任意売却の方が高く売れるということで、競売は待ってくれと述べているが、金融機関側は抵当権実行をあくまで主張している。抵当権の実行を阻止して任意売却することは可能か。
抵当権消滅請求制度(民法383条)は、債務者本人は使えない為、質問のようなオーナー側の主張は法的には認められない。ただし、実際の買い付け価格等を示す事が出来、その額と競売における最近の競落価格等を比較できるような資料があれば、金融機関の担当者も対応を変える可能性もある。任意売却での買い付けに実際に応じてくれる業者を探す事が先決である。

貸主の承諾を得た同居人にある物件への権限は

店舗の賃貸借で、借主から、知り合いの会社の同居を求められ、貸主はそれを承諾した。この場合、借主が退去しても、同居人の当該物件の利用権限は存続することにならないか
賃借権の譲渡や転貸と違って、同居人の追加承諾であれば、同居人は独立した占有権限を有するわけではなく、あくまでも借主自身の賃借権の上に乗っかってるだけの付随的立場に過ぎないため、借主との間の契約が終了した場合には、同居人の利用権限も当然に無くなる(法令上唯一の例外として、居住用の物件で、同居人が事実上の夫婦ないし養子関係にある場合、その者が賃借権を承継できるとされている。借地借家法36条)したがって、実務上は、当該承諾が、あくまでも同居人の追加に係る承諾であり、借主との契約関係が終了すれば当然に同居人の利用権限も消滅することを確認しておくことが望ましい。

周辺利用による貸主の責任

1階事務所を賃貸したところ、借主から公道部分にのぼりを掲げたいとの相談があった。(以前の物件でも同様にしており問題なかった。)応じた場合、賃貸借契約上貸主にリスクはないか。
路占用許可の有無等当局との対応や、万が一のぼり等を原因とする第三者に対する事故が発生した場合の不法行為責任につき、所有者にも何らかの関係が生じてくることが想定される。したがって、公道の使用を前提とする要請は基本的に拒否すべきです。

内容証明郵便による家賃督促の場合、管理業者名義で行うことは弁護士法違反なのか

内容証明郵便による請求は法的な意味を有する請求であり、法律事務に当たるのですべて弁護士法に触れるという見解もある。しかし、内容証明郵便自体には執行力などはなく、あくまでも通知の事実の証明にとどまること、請求の履行を促すのは事実上の効果にすぎないことに鑑みれば、単に滞納の事実を告げ契約に従い支払うよう求める書面でれば、実質的に弁護士法違反とはいえないと考える。一方、借主側が支払を拒否したり、他に法的論理を含む場合には、弁護士法との関係が問題になるので、貸主本人名義で対応するように考える。

弁護士法違反

某会社から「未払い賃料の回収業務をしている。当社の当該業務についての報酬の金額は未払い賃料の回収額の半額である。」との話があった。この某会社の行為は弁護士法違反ではないか
質問内容の事実からすれば、弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取り扱い等の禁止)違反に該当する可能性があると思われる。

共益費の内訳を開示する法律上の義務はあるのか

そのような法律上の義務はない。

賃料と共益費とが別建てで記載しなければならないのか。賃料○○円(共益費込)とは出来ないか。

賃料○○円(共益費込)とすることも否定されないが、もともと賃料(物件の利用の対価)と共益費(共用部分の維持管理費)とは性格が異なること、それぞれ別な要因で増減が検討されうることからすれば、別建てで表示するとともに、その性格付け等を契約書本条で明記しておくことが望ましいと考える。

建物賃貸借契約に違約金条項を入れることは可能か

契約締結の事由の原則の下、可能である。ただし、違約金の額によっては借主が消費者契約法上の消費者である場合、消費者保護法第9条等によって無効と判断される場合がある。また借主が消費者契約法上の消費者では無い場合においても、公序良俗等によって無効と判断される場合がある。

社宅使用目的の法人契約の場合、消費者保護法は適用されるのか。

消費者契約法は個人が借主の住宅賃貸借に適用される。したがって、借主が法人である以上、消費者契約法は適用されない。

見込み収入の上での入居申し込みの際の留意点

借主予定者から、「現在は無職であるが、自治体の家賃補助が半年でる。その間に仕事を見つける」として建物賃貸借契約締結の申込があった場合において、注意すべき事は何か。

滞納リスクが高い

自治体の家賃補助がある期間を経過しても借主が職を得ていなかった場合、その後、当該借主は賃料を滞納する可能性が高い。この場合、当該借主が任意に当該建物を明渡さない場合、貸主は労力・時間及び費用をかけて法的手続きを取る必要が生じる。したがって、質問のような申し入れがあった場合、貸主に対し、上記「自治体の家賃補助がある期間を経過しても借主が職を得なかった場合」のリスクを考えるべきである。

在学期間のみの留学生を受け入れる

某大学の教授から「一時期のみ、私が借主、私が勤務する大学の短期留学生2名を入居者とする賃貸借契約を結んでほしい」との話があった。どのような方式で締結したらよいか。

2種類の契約方式

この場合、①一時使用賃貸借契約、もしくは②定期借家契約の方式で契約をすることが考えられるが、一時使用賃貸借契約の場合、「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らか」か否かについての争いが生じる事があることから、定期借家契約の方式で締結すべきではないか。

ルームシェア―による借主は

建物の一室を3人でルームシェア―をして住む人に貸す場合、3人を借主としなければならないか。
3人を借主とする契約形態の他、その中の1人を代表として借主として、他の2人を連帯保証人とする契約形態もある。

貸主の一部が行方不明の場合の賃貸借

貸主に相続が発生したが、相続登記がされていない場合で、相続人の一部が行方不明等の場合に、当該物件を賃貸借する場合にはどのような手続きを踏めばよいか。

過半数の賛同

新たな賃貸借契約の締結は、共有物の管理行為に当たることから、持分権者の過半数の賛同を得れば、一部の相続人が貸主となって契約する事は可能である。持ち分の過半数が得られるように、他の相続人から同意書等を得ておくなどの手続きを踏むようにする。

使用貸借

分譲マンションにつき、夫婦で居住していたが10年前に離婚し、名義は元夫であるが、元妻が子供共にその物件を無償で使用していた。今回子供も独立したようなので、元妻に出てもらい、当該マンションを売却したいという相談があった。どのように助言すべきか。
元妻の利用関係や使用貸借の関係であるので、借地借家法の保護は働かず、契約や比較的容易に解約できるのが建前である。ただし一方、この関係は離婚に伴う条件として設定されていた可能性があり、条件の内容によっては解約できないか、相当の代償が要求される可能性がある。本件は純粋な賃貸の問題では無く、離婚の条件とも関係もあることから、回答は一般論にとどめ、より具体的には弁護士等に相談するように助言すべき。

転貸借と他人物賃貸の使用貸借

転貸借と他人物賃貸の違いはどこにあるのか。
建物所有者と貸主の関係に相違がある。転貸借の場合、所有者と貸主の間には原賃貸借契約が存在するが、他人物賃貸は、そのような関係が存在しない。したがって、他人物賃貸の場合には、債権関係としては有効であるが、そのままでは権限なき賃貸借となり権利関係が不安定となるため、貸主が所有権を取得するか、原賃貸借契約を結ぶことが必要となってくる。

未登記の建物を賃貸借の目的とすることはできるのか

理屈上は、未登記の建物も賃貸借契約の目的とするこは出来る。しかし、賃貸借契約を締結する際の重要事項説明において、「当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあってはその名称)」を説明する必要があり、未登記の建物を借りる人がいるかという点に問題がある。まずは、当該未登記建物のオーナーに対し、「当該建物を登記しない理由」を明らかにしてもらい、登記しない事について合理的な理由がなければ、当該建物を登記するように要請する事が望ましい。

一定期間の賃借は一時使用賃貸借契約でよいのか

自己所有の建物を建て替える期間だけ他の建物を借りたいという人がいる場合の契約形態としては、一時使用賃貸借契約でよいのか。

よりベターなのは

一時使用契約でも問題はないが、将来的に、真に一時使用の目的であったかどうかの紛争が起きる可能性を否定できない。そのため、建物を建て替える期間がある程度決まっているので、定期借家契約にしたほうがベターであるともいえる。

居住用の区画を事業用として使う場合の契約の種類

居住用として建築された建物の一部屋を法人が倉庫や会議室に使用する目的で賃貸借契約を締結する場合、事業用の賃貸借契約として契約する事となるのか。

目的がポイント

賃貸借契約の目的は、借主が実際にいかなる目的で当該建物を使用するかがポイントであることから、居住用の建物の一部屋を法人が倉庫や会議室に使用する目的で賃貸借契約を締結する場合、事業用の賃貸借契約として契約する事となる。

期間の定めのない契約からの変更契約・借主の増築部分の権利関係

古くからいる借主で、昨年に期間が満了した時点で、期間の定めのない契約とする覚書を結んでいる。今般、貸主より、あらためて当該借主との間で明確に契約書(2年間契約を定める。)を締結したいと要請がなされたが、可能か。また借主は物件を増築している。(承諾の有無は不明)が、この部分については借主に所有権があるか。

合意と協議

当事者間で合意があれば、期間の定めのない契約を期間の定めのある契約にかえることは可能である。この場合、改めて契約締結した時期を始期としてもよいし、当事者間の合意で時期を昨年の契約満了時に遡らせることも可能である。増築部分については、不動産の符合により、増築部分も主たる建物の所有者である貸主の所有となる。ただし、借主は、増築部分の価値につき償金を請求できるので、当事者間でその償金をどのようにするのか、支払時期、方法等を協議し合意しておくことも大切である。