FAQ 賃貸管理トラブル集

管理業者による家財等の処分は??

賃料滞納した賃借人(入居者)が2ヶ月ほど不在。。。家財処分等を行うことは??

勝手に処分は不法行為責任が生じるが、、、、同意条項があれば

賃借人が賃料を滞納しているからと言っても、賃貸借契約の解除等が完了していない限りは契約終了、明渡が完了しているわけではありませんので、賃借物件内にある家財等の動産は賃借人の占有下にありますので、処分を行うと不法行為責任が生じます。(自力救済禁止)まずは賃借人と連絡を試み、賃貸借契約を解除したうえで、強制執行により対処することが原則です。 では、予め賃貸借契約書に処分の同意の条項があれば?これについては、東京地裁平成29年2月21日判決の裁判例が参考になります。 この事例では、賃借人と家賃債務保証会社との保証委託契約書において、インフラの利用状況、郵便物の状況等から通常の生活を営んでなかったと認めれるときは、明渡が成立したとみなすことに同意するとし、本物件に残置された家財道具等の動産類の所有権を放棄し、保証会社がこれらの搬出、運搬、処分することに何ら異議を述べないと規定されていました。ここで注意は、通常の生活を営んでなかったと認められるということです。すなわちいまだに物件をしようしていると評価できるような場合では処分を認める条項は有効ではないということです。(このような条項は、自力救済禁止の法理に抵触し、公序良俗に反し無効となります。)ですから、管理業者としては、契約書に家財処分等の同意条項があったとしても、賃借人との連絡を試み、取れなかった場合の事実を積み重ねるとともに、インフラの使用状況や物件内の状況を確認して、客観的に明渡が完了したものと評価できるかを精査するなどの慎重な対応が必要です。

建物に瑕疵がある場合、損害が予測困難な自然力によるものでも、貸主に工作責任があるのか。

裁判所の判断
①本件豪雨による浸水事故は、占有者である借主が、排水口の塵芥を除去しておれば回避できた可能性を否定できず、占有者である借主に損害賠償責任があるとした。
②当該建物は、サンルームの構築により塵芥の完全な除去が容易でない状況となっており、このために本件事故による損害が増大していること、また、ベランダがタイル張りによって底上げされ、そのため、損害が増大したと認められ、貸主である所有者にも損害賠償責任があるとした。

賃貸マンションの居室から来訪者が転落…貸主の工作物責任は!

賃貸マンションで、居室の窓枠に手すりがなく、腰壁の高さが約40㎝しかない状況のもとで、来訪者がその窓から転落死したため、来訪者の親族が、建物所有者である貸主に対し損害賠償を請求した事案です。
裁判所は、この状況につき、建物の設置に瑕疵があるとして、所有者である貸主の工作責任を認めた。
ただし、転落した来訪者にも過失があるとして、過失相殺(7割)を認定した。

アパートの階段から来訪者が転落事故...階段腐食による工作物責任は!

アパートの階段の踏み板等の溶接部分が全面溶接されておらず、腐食してはがれ、階段を上ってきた来訪者が転落して負傷したために貸主に対して損害賠償請求した事案です。
裁判所は、本件階段がこのような状態にあったことは、土地工作物の設置上の瑕疵に当たり、
所有者には工作物責任があるとして損害賠償請求を認めました。

貸主が実施しようとする修繕を拒否した借主に対して賃貸借契約の解除を求めた

貸主が修繕を伴う保守点検の為に、借主に対して室内への立ち入りを承諾するように求めたが、借主が拒否し、修繕ができなかったことで、貸主が借主に対して賃貸借契約の解除を求めた事案です。
裁判所は、借主があくまで修繕、保守点検のための立ち入りに応じないならば、建物保存に必要な工事をすることができないとして、当該行為は借主の立入り認容義務違反に当たり、かつ、この義務違反によって賃貸借契約の目的を達することが出来ない場合に当たるとして、貸主は賃貸借契約を解除することができるとした。

「入居後の修繕は大小に関係なく賃借人が行う」との規定に基づき借主に修繕費を請求できるのか。

裁判所は、「入居後の修繕は大小に関係なく賃借人が行う」旨の契約条項は、単に貸主が民法第606号第1項所定の修繕義務を負わないとの趣旨にすぎず、借主が家屋の使用中に生ずる一切の汚損、破損個所を自己の費用で修繕し、家屋を賃借当初と同一状態で維持すべき義務があるとの趣旨ではないと解するのが相当とし、貸主から借主に対する修繕費用の請求を退けました。

駐車場内の災害の告知義務・・・損害賠償は!?

この駐車場は約1年前にゲリラ豪雨があり、駐車場に止めてあった自動車が水没した。
その後、当該駐車場につき、新たな借主と契約したところ、今般、またゲリラ豪雨があり、自動車が水没した。
(この自動車のエンジンは動くが、メンテナンスを要する状態である。)
今回、この借主から、「約1年前の当該駐車場の水没の事実の説明を受けていないから、
メンテナンス費用をだしてほしい」と言われている。
貸主は、当該メンテナンス費用を負担しなければならないのか。
「約1年前にゲリラ豪雨があり、駐車場に止めてあった自動車が水没した。」との事実は、ゲリラ豪雨がしばしば発生する場合においては、駐車場の借主に説明しておくべきであると考えられる。
したがって、当該メンテナンス費用の全額か否かは別途の検討を要するとしても、全く費用を負担しないというわけにはいかないと思われます。

駐車場をコンテナボックスの置場として賃貸する場合

ガレージを2台分同一人物に賃貸することを検討しているところ、借主予定者は、1台分は駐車場として使用する予定であるが、もう1台分はコンテナボックスを置きたいとの話をしている。この場合においての注意点は
ガレージを含む駐車場は賃料が高くない一方で、賃料が未払いとなって車が放置された場合の貸主のデメリットが大きい。仮に、借主が賃料を未払いとしてコンテナボックスを放置した場合には、その撤去費用は実質的に貸主が負担する可能性が高い点に注意。

建物の内装の不備による借主からの賃料の減額請求への対応

居住用建物賃貸借契約の建物の内装に不備があり、借主が、当該不備の修繕が完了するまでの間、当該建物の一部を使用・収益できなかったところ、今般、借主から「賃料を全額支払う事はできない」と言い出した。どのように対応すべきか。
本件において、借主は当該建物の一部を使用・収益できなかったことから貸主には賃貸借契約の不完全履行があったこととなり、貸主が借主に対し賃料の全額支払い請求をすることは難しいと思われる。しかし、借主は、当該建物に居住してその使用・収益をしていたことから、借主の「賃料を全額支払うことはできない」との話にも法律上の根拠はない。貸主は、借主が当該建物を使用・収益できなかった部分の賃料を差し引いた金額の賃料を借主に対し請求すべきである。

敷地内駐車中の単車等による事故の責任は

借主がオートバイを敷地に止めている。貸主はそれ自体はかまわないとしているが、近所の子供たちがよく遊びに来ている。万が一オートバイが倒れて怪我などした場合、貸主にも責任はあるのか。
工作物責任の見地から、当該部分が駐車場としての設備部分(土地の工作物)であると評価されれば、その設備に瑕疵があれば土地所有者に無過失責任が生じる。ただ、あくまでも瑕疵が必要であり、かつ実際の場面では被害者側の過失が考慮されるため、所有者としては、当該駐車スペースにつき、いたずらしないような注意書きや容易に入れないような一定の囲い的な物も用意し、瑕疵がない、あるいは怪我は被害者側の過失によるところが多いと主張できるようにしておく。あわせて賃貸借契約上にも、万が一被害者との関係で大屋側が損害賠償した場合には、借主側に求償できるようにしておく必要がある。

土地を事業者に一括して貸す場合、所有者の工作物責任は

一次的には、占有者の責任が問われるケースが多いと考えられる。

アパートの屋根の雪が落ちて車に損害が生じた場合の責任

貸主には工作物責任的要素があるが、天災・不可抗力の部類に入る。しかし、土地柄からある程度雪の量等が予見でき、結果回避の処置をオーナー側の義務とすることができるのであれば、債務不履行責任が発生し得る。また、雪の落下が建物の構造上の瑕疵等に基づくものであれば、工作物責任も考えられる。したがって、オーナーとしては、上記責任が100%発生しないというこうとが言えない場合には、一定の見舞金レベルの対応は必要ではないか。(全損害を賠償する事は、原因の競合一末未曾有の雪+貸主としての債務-と考えられるため、法的には理由なしと考えられる。)管理会社は、管理業務として雪による損害回避までを受任していたのかが問題であり、その点が委託の範囲ではなく、緊急行為としても想定し得ない場合であれば、一般には借主・オーナーとの間で責任を負うことはない。(債務不履行・不法行為責任上の違法性・過失なし)

震度5以上で倒壊のおそれのある建物の賃貸する場合の注意点

媒介における重要事項として、耐震診断の結果を説明する事になる。ただし、貸主や管理業者としては、それだけでは、万が一地震が現実に起きて倒壊した場合に、工作物責任や債務不履行責任を問われた時、免責されるかは疑問である。阪神大震災時にも工作物責任が認められた判例などを参考にしつつ、できれば、一定の耐震補強等をした後に賃貸に供する事が望ましい。仮にそれが出来ない場合には、少なくとも耐震対策を検討している状態にするとともに、管理業者としてもその助言等をしていることを明確に残しておく事が大切だろう。

外階段の老朽化(相場より安い賃料)

倉庫の賃貸で、1階と2階をつなぐ外階段が老朽化して事故の危険性がある。ただし、家賃は相場より格安になっている場合、借主に対し、修繕義務を全面的に負わせることは可能か。
修繕義務につき、特約で一定範囲を借主負担とさせることは有効であり、本件のように賃料が低廉であれば、より問題は少なくなる。ただし、当事者間での修繕負担という意味ではそれでよいかもしれないが、第三者に事故などが発生した場合の工作責任の観点からは、貸主負担でもよいから、早急に修繕しておくべきである。管理業者においては、最低限その旨を指摘し、しかるべき対応をとるように促しておく事が重要である。