FAQ 賃貸管理トラブル集

  1. 借家人賠償保険への加入を義務付けは可能か
  2. 借主による設備の無断撤去による復旧要請
  3. 高低差のある隣地より雨水が入り込んだことによる損害
  4. シロアリ被害の責任
  5. 店舗物件で、借主が増築を希望し、貸主も承諾した場合の注意点
  6. 建物賃貸借で借主が新たに建物を建築した場合の権利関係
  7. 湿気と損害
  8. 建物の内装の不備による借主からの賃料の減額請求への対応
  9. 貸主は一定期間毎の修繕義務はあるのか
  10. 破損個所の補修区分 (小規模な破損で門扉機能に影響はない)
  11. 屋根の修理を借主の負担とする特約は…
  12. エアコンのドレンに虫が…
  13. 鍵の取り扱い(入居者の妻が夫を部屋に入れないために勝手に鍵を交換)
  14. 鍵の取り扱い(付着物がついてあかないのは軽微な修繕か)
  15. カビによる被害における貸主の対応
  16. 修繕したが改善しない事による損害賠償請求
  17. 積もり積もった汚れの修理代は
  18. 一戸建ての賃貸で立派な庭がある。庭の植栽の手入れに要する費用の負担は
  19. 居抜き物件における借主への修繕義務の負担は可能か
  20. 建物の窓枠の修繕は小規模修繕と大規模修繕のどちらに該当するのか
  21. 火災報知機の設置は借主が対応する事としても問題ないか
  22. 耐震問題で借主に退去を求める場合
  23. 区分所有建物の賃貸で、換気扇及び外部排気口の掃除につき、誰が行うべきか。
  24. 貸主が応ずべき修繕
  25. 損害賠償の合意の書面の内容は
  26. ネズミが出た場合
  27. 火災報知器の設置で借主の協力を得れない場合の責任は
  28. 使用貸借の物件については、火災報知器は貸主・借主どちらが設置すべきか。
  29. 火災報知機を設置しない場合、貸主等に責任が生じるのか
  30. 火災保険加入義務
  31. 古い建物で壁紙がはがれた。この場合の修繕義務は。
  32. シロアリ被害(解約後の引越し費用との請求)
  33. シロアリ被害(衣服の損害賠償)
  34. シロアリ被害(事業用テナント)
  35. 貸主による保存行為
  36. 地震による破損による補修負担
  37. 構造上の問題の説明がなかった場合(エアコンスリーブ等)
  38. 貸主の修繕義務を放棄できるか
  39. エアコンに関しての特約
  40. 合意解除後に借主からの請求
  41. 消耗品の損傷で水漏れ
  42. 性能の欠如がある場合の責任追及
  43. 老朽化による借主からの要請への対応
  44. ガスエアコンのリモコンを紛失。取り換え費用全額請求できるか。
  45. 水漏れ事故による借主からの休業補償的な請求を受けた場合
  46. 土地の賃貸借契約における負担区分(壁と雑草)
  47. 老朽化した建物を賃貸している場合
  48. 漏水調査依頼 (1世帯のみの問い合わせ)
  49. コロナ渦における建物維持  (専有部分修繕)
  50. 正しく新型コロナウイルスと対峙することが大事です。

借家人賠償保険への加入を義務付けは可能か

建物賃貸借契約には「借主は火災保険に加入する。」旨の条項があるにもかかわらず火災保険に入らない借主がいる。当該借主を火災保険に強制的に加入させる手段はないのか。
借主に火災保険に入ることを法律では直ちには強制し得ない。また、未加入は契約違反行為であるが、そのことだけをもって解除する事も困難である。引き続き契約の履行としての火災保険加入を要請していくことになろう。

借主による設備の無断撤去による復旧要請

音楽スタジオとして借りている借主につき、点検等のため専用部分内に立入ったところ、警報器等が撤去されている事が判明した。早期に復旧するように要請したが応じる気配がない。どのように対応すべきか。
警報器の設置が義務付けられている以上、その撤去は借主としての善感注意義務違反と評価される。特に警報器の設置は専用部分のみならず建物全体の安全の観点からも重要であることから、その無断撤去と、是正に応じない姿勢は信頼関係破壊と評価できると考える。したがって、契約の解除も辞さない姿勢で、改めて設置を要請し、それでも応じない場合には解除・明渡しを求める事になるのではないか(貸主側としても十分な対応をとっていないと、第三者に被害が生じたときに工作物責任や債務不履行責任等の観点から問題とされうる)

高低差のある隣地より雨水が入り込んだことによる損害

A所有の甲土地に甲建物が建っており、その隣地にB所有の乙土地に乙建物が建っている。なお、甲土地と乙土地は、甲土地の方が約30㎝高くなっている。今般、BからAに対し、「甲土地から乙土地に大量の雨水が流れてきており、乙土地の地盤が緩んでしまっている。場合によっては、今後、乙建物が倒壊する危険性すらある。甲土地から乙土地に雨が流れないような工事をしてほしい、なお、今後、乙建物が倒壊した場合、損害賠償責任を請求する。」との話があった。本件において、AがBに対し損害賠償責任を負う可能性はあるか。
将来、乙建物が倒壊し、その原因が「甲土地から乙土地に大量の雨水が流れたがために乙土地の地盤が緩んだこと」にあり、Bがその立証出来た場合は、本件に於いてAがBに対し損害賠償責任を負う可能性もある。ただし、実際上は、その立証は困難であると考えられる。

シロアリ被害の責任

シロアリにより建物の基礎部分の被害が発生した。借主が窓を開放し続けることから侵入し繁殖したとも考えられる。この場合、補修費用等は誰が負担すべきか。
シロアリ被害の原因が100%借主の不注意によるものと立証できる場合には借主の負担となるが、その立証は困難である。まどの開閉についても、住居として使用する以上、窓の開閉があることは通常の使用方法であり、直ちに過失と認められるわけではない。したがって、建物の主要構造部分であることも考えれば基本的には貸主が負担する事とし、借主側に何らかの落ち度があれば応分の負担を求めるという形で協議していくべきではないかと考える。

店舗物件で、借主が増築を希望し、貸主も承諾した場合の注意点

店舗物件で、テナントが一部建物の増築を要請し、貸主も承諾している。この場合の賃貸借契約で特に注意すべき点は何か。
退去時に、当該増築部分が造作買取しないし有益費償還請求の対象となりうるので、その扱いをあらかじめ決めておく(それらの権利を排除する特約は有効である。)また、当該増築部分の管理や、その増築部分において事故が生じた場合の責任などについても、あらかじめ決めておくことがのぞましい。

建物賃貸借で借主が新たに建物を建築した場合の権利関係

建物賃貸借であるが、借主が建物を壊して新たに賃貸建物を建てたいとしている。貸主もそれ自体は構わないとしているが、権利関係等で注意すべき点はあるか。
建物を借主が建ててしまうと、建物の所有権が借主に帰属し、借地関係が発生しかねない。したがって、あくまでも建物は貸主が建ててそれを賃借する形にし、権利の所在、建築費用や退去時の処理について契約で明確に決めておくことが大切である。

湿気と損害

戸建ての賃貸で、1年前に配管の水漏れがあったため、補修をした。今般借主が解約したが、当該事故によって湿気が多く家具等にカビが生えるなどしたため、敷金の全額返還と家賃の全額返還を強行に求めてきた。どのように考えるべきか。
退去時に借主の責任による損耗等があればその原状回復費用は敷金から差し引くこともできる。また家賃についても、借主は少なくとも修理後1年間物件を利用し、その間苦情も言ってきていない以上、物件の利用の対価として賃料は当然に発生し、貸主側はそれを返還すべき義務も根拠も見出せない。また家具等にカビが生えたという事に対しては、具体的にその存在及び損額額等と、それが1年前の事故に起因したものであることなどを立証してもらう必要がある。いずれにしても、借主側の主張に対しては、その根拠を明らかにしてもらうとともに、場合によっては訴訟の場で反論していくことになるだろう。

建物の内装の不備による借主からの賃料の減額請求への対応

居住用建物賃貸借契約の建物の内装に不備があり、借主が、当該不備の修繕が完了するまでの間、当該建物の一部を使用・収益できなかったところ、今般、借主から「賃料を全額支払う事はできない」と言い出した。どのように対応すべきか。
本件において、借主は当該建物の一部を使用・収益できなかったことから貸主には賃貸借契約の不完全履行があったこととなり、貸主が借主に対し賃料の全額支払い請求をすることは難しいと思われる。しかし、借主は、当該建物に居住してその使用・収益をしていたことから、借主の「賃料を全額支払うことはできない」との話にも法律上の根拠はない。貸主は、借主が当該建物を使用・収益できなかった部分の賃料を差し引いた金額の賃料を借主に対し請求すべきである。

貸主は一定期間毎の修繕義務はあるのか

賃貸借契約締結から約20年が経過した建物(居住兼事務所用)の借主が貸主に対し、じゅうたんの取り換え、クロスの張り替え等の修繕を求め、さらに、修繕についての一覧表の作成を求めてきているが、両者間において折り合わない。どのように対処すべきか。
貸主は借主に対し、建物を使用・収益させる義務はあるが、何年間に一度、じゅうたんの取り換え、クロスの張り替え等をしなければならない義務はなく、貸主には、借主が求めている「修繕についての一覧表」の作成に応じる義務もない。そのため、借主には「貴殿の求めには応じる事はできない」との対応をするべきである。

破損個所の補修区分 (小規模な破損で門扉機能に影響はない)

1戸建ての賃貸で、借主から門扉が壊れているので、取り換えを要求されている。しかし、契約条件は「現状有姿」であるとともに、当該門扉の破損(小規模な破損で門扉機能に特段の影響はない。)は契約時点から存在し、借主も十分に認識し得たはずである。管理会社としては簡易補修で対応する旨連絡したが、借主は全面取り換えの要求一点張りである。どのように考えればよいか。
相談内容の諸事情のもとでは、借主が全面取り換えを要求することには無理があるものと考える。再度簡易補修での対応に理解をもとめ、それでもだめな場合は、相手方からの法的請求に対し、上記諸事情を主張立証して対抗することも十分に考えうるものと思料する。

屋根の修理を借主の負担とする特約は…

築50年の建物につき、定期借家契約を締結する事を検討している。当該建物の屋根の修繕義務(なお、大規模を含む)を借主の負担とする特約は有効といえるか。
修繕義務は原則として貸主の負担である(民法606条)が、当該規定は任意規定であることから、特約で修繕義務を借主の負担とすることも認められる。そして、小規模を借主負担とsるう特約が有効であることは争いがない。しかし、大規模を借主の負担とする特約が有効であるかは問題であり、最高裁判所の判例も当該特約は、貸主の修繕義務を免除したものに過ぎないとしている。したがって、大規模修繕を含むとしている点については、有効性が問題となる。

エアコンのドレンに虫が…

賃貸物件につき、ある居住者からエアコン用のドレンのところに虫が見えたと苦情があり、(特に証拠はない)ネットでふさぐなどの対応をしたところ、その人から、「それでは不十分である、建物全体につき、一切虫などがでないように改良工事を行うなどの抜本的対策をせよ」との要請があった。どのように考えるべきか。なお他の入居者からは同様の苦情は一切ない。
ネットでふさぐなどの措置を講じれば、貸主側の義務を果たした事になり、それ以上の対応は原則不要であると考えられる。借主の要請は、賃貸借契約上の借主の権利ではないことを説明することになる。

鍵の取り扱い(入居者の妻が夫を部屋に入れないために勝手に鍵を交換)

貸主の承諾を得ずに行われ、かつ契約者(夫)の当該物件の使用収益を妨げており、違法とされる可能性が高い。したがって、鍵は元に戻すように要請すべきである。

鍵の取り扱い(付着物がついてあかないのは軽微な修繕か)

賃貸物件の鍵が開かなくなり、借主が鍵屋を呼んで対応したところ、8,400円掛かった。借主は、当該費用を貸主に請求してきたが、貸主からは、軽微な修繕にあたるとして、契約上借主負担とされていることをもって、負担には応じないとしている。どのように考えればよいか。なお、当該仕様の鍵に不具合が生じることは今まで経験がなく、メーカーに問い合わせたところ、鍵に付着した場合にはそのような状況が発生する可能性はあるとのことであった。
通常の管理の状況において当該状況が発生する可能性がないのであれば、特段の事業がない限り、債務不履行の問題ではなく、あくまでも設備等劣化に対する修繕問題であること、軽微な修繕については契約上借主負担とされていることからすれば、借主側の負担という考えも成り立つ。ただし、無用なトラブルを回避する観点からすれば、協議の上、折半等の方向で検討するのが望ましいのではないか。

カビによる被害における貸主の対応

新築アパート(2DK家賃月額6万7千円)に入居後2ヶ月でフォークインクローゼットにカビが発生し、服やバック等にもカビが付着してしまったとのクレームが入った。確認したところ、実際に若干のカビが発生していた。しかし、その部屋以外の入居者のいる部屋を確認してみたが、カビが発生したという事実は全くない。貸主、管理会社の責任はあるか。
また、一応の謝罪もかねて、上の階の空部屋に移ってもらい、月額7万円の家賃も現在の家賃と同様にするという提案をしようと思う。
他の部屋ではカビが発生していないとの事実を重視すれば、貸主、管理業者の責任は生じてないとも考えられるが、それだけで責任の有無が決まるわけではなく、一概にはいえない。ただ、入居者の損害全額について責任が生じるとは考えにくい(少なくとも入居者にも何らかの落ち度があって過失相殺がされる)また、家賃減額等の提案は、交渉における提案としては至極合理的な比較的好条件の提案と思われる。

修繕したが改善しない事による損害賠償請求

賃貸している建物の湿気がひどいので貸主の依頼を受けて給水管を修繕したが改善しない。貸主から損害賠償請求をされているが応じる必要はあるか。
損害賠償請求が発生するためには原則として故意・過失が必要であるところ、本件において建物の湿気がひどく、修繕をしても改善しないのは当該建物の問題であって、管理業者に故意・過失がある場合とは思えない。したがって、相談内容の限りでは、貸主からの損害賠償請求に応じる必要はないと思われる。

積もり積もった汚れの修理代は

築約10年の建物において台所の流しの配管に油が詰まっており、修理の必要がある。代々の借主の流した油が積もり積もったものと思われるが、それでも修理代は全額貸主負担となるか。
現在の当事者のいずれの過失もなく、かつ、物件の使用に必要な設備の不具合に該当することから、貸主の修繕義務の問題となり、修理代は、全額貸主負担と考えられる。

一戸建ての賃貸で立派な庭がある。庭の植栽の手入れに要する費用の負担は

庭の植栽の手入れは「修繕」には当たらない。そして、一戸建ての賃貸は、庭部分には借主が出入りできない構造になっているなどの特段の事情がない限り、建物とその敷地全体につき賃貸の対象となることから、庭の管理権も借主に帰属し、その負担も借主の負担となることが原則である。ただし、契約で別に定めることは可能である。

居抜き物件における借主への修繕義務の負担は可能か

築20年以上の建物につき、今まで借主たる焼肉店が使用してきたが、今般、期間満了で退去した。次に当該建物を居抜きで借りる人は、当該建物において蕎麦屋を営むこととなった。当該建物はとても古く、また賃料も安いことから、貸主は当該建物の修繕義務を借主の負担とさせたいが、建物の修繕義務をすべて借主の負担とさせるような特約条項は有効か。
修繕義務についての民法の規定(606条)は任意規定であることから、「一定の範囲」で修繕を借主の義務とする特約も有効とされている。(最高裁判所昭和29年6月25日判例)ただし、建物の構造にかかわる修繕や、建物の構造ではなくても借主にとって過大な負担となるような修繕は、上記の一定範囲を超えると思われる。

建物の窓枠の修繕は小規模修繕と大規模修繕のどちらに該当するのか

窓枠の修繕の程度による。当該窓枠の修繕が、例えば、国土交通省作成の賃貸住宅標準契約書別表第4記載のものであれば小規模に該当するといえる。

賃貸住宅標準契約書別表第4
(第8条 修繕関係) 「畳表の取替え 裏返し」「ヒューズの取替え」「給水栓の取替え」「障子紙の取替え」「ふすま紙の張替え」「排水栓の取替え」「電球、蛍光灯の取替え」

火災報知機の設置は借主が対応する事としても問題ないか

消防法上火災警報器の設置義務者には占有者も含まれ、借主も設置義務を負う。ただし、賃貸の場合、貸主としての責任及び所有者としての責任に鑑みれば、原則として貸主が対応すると考えることが望ましい。借主側で対応する場合でも、貸主の確認などの事後的なチェックをしっかりと行う事が必要ではないか。
消防法上火災警報器の設置義務者には占有者も含まれ、借主も設置義務を負う。ただし、賃貸の場合、貸主としての責任及び所有者としての責任に鑑みれば、原則として貸主が対応すると考えることが望ましい。借主側で対応する場合でも、貸主の確認などの事後的なチェックをしっかりと行う事が必要ではないか。

耐震問題で借主に退去を求める場合

築50年以上の古い賃貸建物につき、建物の耐震性に重大な問題があることが判明した。そこで、貸主が借主に対し建物の明け渡しを求めたところ、借主が明渡しの拒否をした。今後、いかなる対応をとるべきか。
貸主から借主に対し、改めて、耐震診断をした専門家の報告書を添えて耐震診断の結果を通知して、建物の明け渡しを求める。それでも借主が建物の明け渡しを拒否した場合、貸主から借主に対して、①耐震診断の結果、建物の耐震性に重大な問題があることが判明した事実、②その事実を借主に対して通知したにもかかわらず、借主が建物の明け渡しを拒否した事実を確認する書面を内容証明郵便で郵送しておく。なお、借主が「建物を明渡す」との意向を示した場合、「建物の耐震性に重大な問題があることが判明した」とはいえ、そのことのみをもって正当事由が100%あるとはいえないことから、実際上は、一定の立ち退き料の支払いを要する。

区分所有建物の賃貸で、換気扇及び外部排気口の掃除につき、誰が行うべきか。

その部分が共用部分であれば原則として、管理組合の管理に属するが、規約上区分所有者等の清掃管理の範疇としての取り決めがあることも多いので規約を確認する。その上で、区分所有者等の管理に属する事となれば、今度は貸主か借主化の問題となる。清掃は、修繕とは異なり、法令上どちらかの義務とは明記されていない為、明確な基準はないが、その清掃が日常の生活上の清掃の範囲に属するものであれば借主側の善管注意義務として借主が、一定の工事等が必要な場合には修繕に準じて貸主である区分所有者が、それぞれの対応するというのが1つの考え方ではないか。

貸主が応ずべき修繕

建物の借主から、「風呂の排水状態が悪いから直してほしい」「風呂のドアが閉まらないから直してほしい」「シャワーの管から水漏れがするから直してほしい」等の申し入れを頻繁にうける。貸主は、このような借主の申し入れにすべて応じなければならないか。
賃貸借には「畳表の取り換え・裏返し・ヒューズの取り換え・障子紙の張り替え・給水栓の取り換え・ふすま紙の張り替え・排水栓の取り換え・電球・蛍光灯の取り換え・その他費用が軽微な修繕は借主の負担とする。」との約定があることが多い(賃貸住宅標準契約書第8条参照)したがって、貸主は、上記借主の申し入れにすべて応じなけらばならないわけではなく、契約内容に応じてそれぞれが対応することが求められる。

損害賠償の合意の書面の内容は

区分所有建物2階部分から漏水事故が発生し、1階テナントに被害が生じた。被害に係る損害賠償の分担につき、協議が整ったので書面にしておきたい。どのような内容にすべきか。
2階専用部分所有者、1階専用部分所有者及びテナントの3者で、事故の状況、損害の負担の方法を確認し、かつ精算条項(これ以外に本件につき何ら債権債務がないことを確認する。)を入れて合意書を作成する。公正証書にしておくことも有益である。

ネズミが出た場合

建物にネズミが出現するとの情報が入ったので、ネズミの生息状況の調査をすることとなった。その調査費用は貸主と借主のどちらの負担か。
貸主は借主に対して、賃貸借契約の目的物を使用収益させる義務があるところ、その目的物たる建物にネズミが生息していては、貸主は上記義務を果たしていないということになるといえる。また、ネズミが生息していれば建物が毀損することが心配であるし、ネズミの生息の調査は建物全体に及び、借主の専用部分のみで調査が終わると思われない。したがって、ネズミの生息状況の調査費用は貸主負担となるものと思われる。

火災報知器の設置で借主の協力を得れない場合の責任は

住宅用火災報知器につき、貸主負担で設置をすべく、借主に立入りと工事実施の承諾を得ようと連絡を何度も試みているが一向に回答がない。この場合でも、万が一火災が生じたときは、貸主や管理業者の責任が生じるのか。
貸主の債務不履行責任や管理会社の責任については、しかるべき対応をとったにもかかわらず借主側が対応しなかったという点から過失はないものと考えられ、特段の理由がない限り当該責任を負うことはないと考えれる。また貸主には建物所有者としての工作物責任(無過失責任)があるが、占有者に火災報知器が未設置という瑕疵の除去に協力しなかった過失があるとされれば、まずは占有者の責任が問われることになり、貸主まで責任が及ぶ事はないと考えられる。いずれにしても、貸主側で、なすべきことをしたにもかかわらず、借主側が応じずに未設置となっている経緯を記録に残しておくことが大切である。

使用貸借の物件については、火災報知器は貸主・借主どちらが設置すべきか。

消防法上はいずれも設置義務者になる。賃貸借の場合には物件を目的に従って使用される義務の一環として、一義的には貸主が負うべきとされるが、使用貸借ではその規定は適用されず、逆に借主側に用法順守義務、通常の必要費の負担義務が課せられていることからすれば、借主側の義務は賃貸借に比べ重いということはできよう。

火災報知機を設置しない場合、貸主等に責任が生じるのか

消防法上の罰則はないが、万が一火災が発生し、火災報知機がないことによって被害が拡大したなどの事情がある場合には、債務不履行ないし工作物責任の問題が生じる。

火災保険加入義務

契約書に借主側で火災保険等に加入することを義務付けているが、それは有効か。また、契約期間中に火災保険等が切れた場合、引き続き保険加入を要請する事は可能か。
契約時に火災保険等加入が義務付けられているのであれば、それは、契約当初の入り口段階での条件ではなく、契約の存続期間(契約更新を含む)中を通じてその条件が保持されていることが要請されているのであって、火災保険等が切れた場合には、借主には、保険の再加入等の契約上の義務があると解することができる。これは、万が一の場合に借主が貸主に対し負担すべき損害賠償リスクの転嫁の意味合いがあり、内容的にも合理性があって、消費者契約法上の無効ではないと考える。

古い建物で壁紙がはがれた。この場合の修繕義務は。

契約期間中の修繕は、特約がない限り、貸主側の義務である。ただし、躯体構造部分とは関係なく、かつ、生活を維持する上で直接支障がない部分については、古い物件であることと、家賃との兼ね合いから、貸主の修繕義務は免除される場合もあるだろう。

シロアリ被害(解約後の引越し費用との請求)

一戸建ての賃貸でシロアリが発生した。借主は退去を申し出ているが、その場合の引越し費用等は貸主で負担する必要があるのか。

過失によって

シロアリの発生によって客観的に居住不可ということであれば、契約の解除に合わせて、損害賠償請求が可能となる。そして、この損害の中には、転居に必要不可欠な費用である引越し費用も含まれ得ることから、貸主が負担せざるを得ないことになる。ただし、シロアリの大発生を借主が放置していた過失などがある場合には、過失相殺や、そもその借主側の過失による損害ということで、貸主に請求できない場合も考えられる。

シロアリ被害(衣服の損害賠償)

木造8世帯の賃貸アパートのうちの1つの世帯から「シロアリの被害が出た。服をたべられてしまったので、損害を弁償してほしい」との申し入れがあった。この申し入れにどのような対応をすればよいか。
本件において、貸主に損害賠償責任が認められるには、貸主に「過失があった」といえる場合でなければならない。しかし、本件において、貸主は勝手にアパートの部屋に入って「シロアリ被害の有無の調査をすることは出来ず、また借主が通知義務を果たしていたかが疑問である。」とするならば、まず貸主に過失がなかったから損害賠償責任も認められない。との回答をして借主の反応をみることで足りると思われる。

シロアリ被害(事業用テナント)

事業用賃貸借で内部造作はテナントが行う。今回建物でシロアリ被害が生じた。この場合の対応につき、どのように考えればよいか。

原則貸主負担

シロアリの発生原因がテナントの工事箇所である内部造作であることが特定できれば、テナントの不法行為等も想定し得る。ただし、現実問題としてそのような特定は難しいため、その場合には修繕の基本的な考え方に基づき、原則貸主負担で対応するが、特約があれば、一定範囲をテナント負担とするこ可能ということになる。契約に、修繕の負担を明確に取り決めておくとともに、テナントの造作に基づく損害については、テナント側が責任を負う旨、取り決めておくことが考えれらる。

貸主による保存行為

排水設備につき、汲み取りから下水道に変更する工事につき、借主の一人と連絡が取れない。ただし、借主は物件をしようしている。借主の承諾無くして立ち入り、工事をすることができるのか。
当該工事は保存行為に該当し、借主は当該工事の実施につき拒否できず、かつ、それに付随する立ち入りも、正当な理由なく拒否できない。したがって、再度、工事の時期、借主に応諾義務があること、時期的に変更が必要であればすぐに連絡すること、連絡がなければ保存行為の一環として立ち入り、工事を実施することを書面で通知しておく。

地震による破損による補修負担

地震により、備え付けのレンジが落下したり、人が転んだりしたことによって壁に穴があいてしまった。補修は貸主又は借主のどちらの負担になるのか。
破損の原因が地震であり、かつ、レンジの落下等が借主の注意義務違反と評価しにくいため、原則として、賃貸借契約上の貸主の修繕義務の範疇に入ると考えられる。

構造上の問題の説明がなかった場合(エアコンスリーブ等)

賃貸マンションで、借主がリビングとして使用している部屋にエアコンを取り付けようとしたところ、構造上の問題で取り付けることができなかった。業者に対しても「説明がなかった」としてクレームがきている。どのように対応すればよいか。

最終的には建築会社にも

リビングルームにいかなるエアコンも設置できないというのは、貸主側の居住目的に従い物件を使用させるべき義務に反すると評価される余地がある。また構造上の問題とはいえ、一般的な注意義務をもってそのような不具合がわかる場合には、業者の調査説明に係る過失責任も問われる余地がある。代替物件の提供等で対応を図るとともに、そもそも原因が設計施工上のミスにある可能性が高いので、最終的には建築会社にも応分の責任を求めることが考えられる。

貸主の修繕義務を放棄できるか

貸主が所有する古い建物を賃貸するにあたり、貸主が修繕義務を負うのは嫌だと言い出した。修繕義務を借主の負担とする特約は有効か。

正当化要素と借主の納得が必要

修繕義務は貸主の義務であるが、契約の自由の原則から、特約で借主の負担とすることはできる。ただし、単に契約書に「修繕義務は借主の負担とする」との内容を条項に設けるのみでは足りず、借主が真に納得して特約につき合意したこと、及び、修繕義務を借主の負担とすることの正当化要素が必要である。そこで、貸主と借主との間の賃貸借契約書に①現在は当該建物に修繕を要する部分はないが、当該建物が古い物件であることから、今後は修繕が必要な部分が出てくることが想定されること、②(①を借主が十分認識した上で)修繕義務を借主の負担とすること、③(修繕義務を借主の負担することに対応して)賃料の家賃を相当額引き下げるなどの内容の特約条項をいれておくことが重要である。

エアコンに関しての特約

事業用物件で、前の借主が10年使用した業務用エアコン付きで貸すことを予定している。契約、中途故障した場合の修理費用は借主が100%、取換え費用は貸主と借主が折半で負担するとともに、買取請求をしないとの特約をしようと検討中。この特約は問題ないか。
いずれの内容も、当事者間での合意があれば有効である。その際には、エアコンが10年使用したものであることなどを知らしめた上で、上記内容につき十分説明の上、契約することが大切です。

合意解除後に借主からの請求

築年数の経った一戸建ての建物を借りたところ、特に2階の結露がひどく、床に水がたまるくらい濡れてしまうような状態で、実際に衣服も濡れてしまい使用できなくなったものもある。そのため借主は、貸主との賃貸借契約を合意解除して建物を退去することにしたが、その際、借主は、貸主に礼金相当額の返還を求めることは可能か。
貸主は借主に対し、本件建物を使用収益させる善管注意義務を負っているところ、本建物は古いことなので、貸主は結露がひどいことは十分に認識していたと考えられる。にもかかわらず、本件建物の2階の結露の状態が悪いことを説明せず、結果、借主に損害を与えたものと思われる。したがって原則として、借主は貸主に損害賠償を求めることができると考えられる。とはいえ、借主の損害額は高額でないと思われることからすると、裁判まですることは、労力・時間・コストを考えると割に合わない可能性が高い。したがって、借主が貸主に「礼金相当額の返還で和解して、この紛争を解決する」旨協議することは特に問題ない。しかし、貸主がこの申し入れに同意しない場合は別の和解案を検討するか、もしくは、小額訴訟等の法的手続きをとる必要が出てくる。

消耗品の損傷で水漏れ

賃貸管理物件で水漏れがあり、原因は水道部分の消耗品に損傷があり、修繕を行った。契約には消耗品の修繕は借主の負担と定めている。この場合、誰にどの程度費用を請求できるか。

契約上は借主だが...

金額は、実際に工事に要した費用となる。契約上は借主に負担を求めることとなるが、その損耗が入居当時から存在したのかなどの問題もあり、物件を目的に従い使用収益させる義務及び原則として修繕義務が貸主にあるととなどを踏まえ、契約の有効性などに留意しつつ負担者を検討すべきである。

性能の欠如がある場合の責任追及

バルコニーに排水口が設置されておらず、雨の度に水浸しになってしまう。設計施工会社に責任追及できないか。
当該不備が設計施工上の瑕疵であり、居住者の生命財産に影響が生じるものであれば、設計施工会社に対し法的責任を求めることが可能である。ただし、債務不履行責任の時効期間は10年なので、それを超えている場合は不法行為責任を検討することになる。

老朽化による借主からの要請への対応

事業用賃貸借として衣装の倉庫として貸していた物件(築年数はかなり古いもの、家賃は相場よりも低い)につき、床の強度不足等から荷台等の搬入が困難になりつつある。この点につき、将来的に借主から貸主に対して、貸主の修繕義務としての補強工事の要請がくることが予想されるが、どのように考えればよいか。

判例で補強工事を認めなかった事例有。

事業用物件であり、借主も借りるときに現状を確認して借りているということ、家賃が地域相場よりも低いことから、貸主が負っている目的に従って使用させる義務も、上記事情を加味すれば緩和すると考えることも可能であろう。したがって双方の協議の中で決定される内容であるととらえるべきでないか。

ガスエアコンのリモコンを紛失。取り換え費用全額請求できるか。

ガスエアコンが設置されている物件で、借主が退去にあたってリモコンを失くした。当該エアコンはリモコンがないと作動できないため、取り換えが必要。(製造後10年以上たっているためリモコン・エアコン共に製造中止)貸主は全額借主に取り換え費用を負担するように要求している。どのように考えるべきか。
理屈上は、リモコンを紛失しエアコンが使えず、取り換えなければならないということを損害ととらえ、損害賠償請求として全額負担を求める事は可能である。ただし、相当因果関係が問題とされ、全額が認められるのは難しいだろう。

水漏れ事故による借主からの休業補償的な請求を受けた場合

水漏れ事故が発生し、店舗借主の什器等に損害が生じた。物損については保険でカバーされたが、借主からの休業補償的な請求がなされている。それに対し、貸主は一定期間家賃を減額する意向であるが、このような解決は可能か。
観念的には、休業補償も損害の一部として請求可能可能であるが、実際の損害額の算定や、因果関係の立証に困難を生じる場合もまれでない。その点を踏まえつつ、借主に対し上記提案に基づき話し合いで解決をはかること自体は有益であり、借主さえ了解すれば、裁判外での私法上の和解という位置づけで可能である。この場合、書面で明確に合意内容を取り交わすことが大切である。

土地の賃貸借契約における負担区分(壁と雑草)

土地所有者兼貸主は賃借人との間で土地、倉庫及び工場についての賃貸借契約を締結している。①倉庫ないし工場の外壁に問題が生じた場合の修繕費用は貸主・借主のどちらが負担すべきか。また②雑草の除去費用は貸主と借主のどちらが負担すべきか。
貸主は借主に対して、本物件を使用及び収益させる義務を負いかつ修繕義務を負う。したがって、①倉庫ないし工場の外壁に問題が生じた場合の修繕費用は賃貸人が負担しなければならない。(ただし、倉庫ないし工場の外壁に生じた問題が、借主の故意ないし過失に基づく場合は借主が負担する。)②雑草の生い茂る程度にもよるが、原則として雑草の除去費用も貸主が負担することになる。

老朽化した建物を賃貸している場合

築30年以上の一戸建て2戸の賃貸借契約の管理をしている。貸主は本件建物を7~8年前からレストランを営む会社に賃貸している。借主である会社は多額の日費用をかけて本件建物を改修し、古い民家のレトロな雰囲気での食事を売り物にして業績も好調のようである。しかし、本件建物は老朽化しており、素人が見ても耐震補強をしないと危険な建物である。どのように対処すべきか。
建物の所有者は工作責任を負うことから、本件建物の老朽化が原因で事故が起こった場合、本件建物の所有者件貸主は損害賠償責任を負う可能性がある。事故が発生した場合、本件建物の管理者であるものも善管注意義務に基づく損害賠償責任を負う場合があるといわざるを得ない。そこで、まず、早急に、本件建物の耐震診断をすべきである。そして、本件建物の改修ないし、建て替えが必要であるとの結果が出た場合は、本件建物の改修ないしは建て替えをしなければならない。しかし、借主にしてみれば、業績好調のレストランを改修の場合は一時的に閉店、建て替えの場合は閉店しなければならなくなることから、借主が本件建物の改修ないし建て替えを拒否することも予想される。この場合は、事故が起こった事に基づて発生した損害賠償責任の多くを借主の責に帰せしめることになる。とにかく、本件建物の所有者件貸主及び管理者としては、早急に、本件建物の耐震診断をして、その結果に基づき、補修ないし建て替えの判断をして、その判断結果を借主に示すことである。

漏水調査依頼 (1世帯のみの問い合わせ)

合計24戸、築20年のマンションン賃貸管理をしている。その中の1戸の借主から「6月の水道料金が4月の水道料金と比べて20%も上昇。その原因として漏水の可能性がある。調査をしてほしい」との連絡が入った。なお「水道料金があがった」と連絡してきた借主は、この1戸のみであり、その家族構成は4人である。
漏水の調査には多額の費用がかかる。そこでまず、「水道料金が上がった」との連絡があったのが1戸のみであることを説明して、もう少し様子を見てもらう事に理解を求める。それでも「漏水の可能性がある」との場合、多額の費用をかけて漏水の調査をするまえに、マンションの住民に説明をして全戸の水道を一斉に止めて調査する(全戸の水道を一斉にとめても水道資料が認められている場合は漏水の可能性が高い)。そして、漏水の可能性が高いとの結論に達した場合には専門業者に依頼する。

コロナ渦における建物維持 (専有部分修繕)

【設備の調達の困難やコロナウイルスの感染を恐れて修繕が遅れる場合の責任等について】

新型コロナウイルスの影響の在宅時間が多くなり、普段はあまり気にならない箇所や使用頻度が増えることによって設備の劣化や損傷が増えたことを実感しております。それに加え、通常のメンテナンス作業がスムーズに行えないことも起こっております。

その原因は資材や設備の調達が困難になっていること、修繕やメンテナンスに室内に入ることについての懸念などです。

その結果、修繕等が必要な場合にもかかわらず貸主側が実施しないときは修繕義務違反になって債務不履行となることがあります

ただ、新型コロナウイルスの影響で設備の調達が遅れる場合は、外的要因となるので賃貸人側の債務不履行とはならないと考えます。ただし、設備の調達が困難なことで修繕等の対応が遅れることを事前に説明してトラブル回避を行うべきです。

また、賃借人側が修繕の必要があるにもかかわらず、実施させてない場合は善管注意義務違反となります。

正しく新型コロナウイルスと対峙することが大事です。

【借主様(入居者)に感染者が出た場合】

(新型コロナウイルスは誰にでも感染するリスクがあります。たとえ同じ建物内で感染者がでたとしても、誹謗中傷はやめましょう)

他の入居者への告知はすべきかどうかを悩まれると思います。

これについては、密がキーワードとなると考えます。

建物内で他の入居者と密になる可能性があるのは、エレベータ内等であり、共用部分等への感染防止対策が施されているのであれば、プライバシーのことを考えると告知の義務はないと考えております。

同様に、以前に新型コロナウイルスに感染した入居者が生活していたとしても、募集の際に適切な消毒等が施されているのであれば、嫌悪すべき事情とはならず、心理的瑕疵にも該当しないと考えます。
ただし、次の入居者が新型コロナウイルスの有無が物件を決める重要な判断の場合は事実は提供するべきと考えます。